複合材料で東大阪の中小5社がスクラム、炭素繊維、強化プラスチック(CFRP)に着目した有志企業が研究会を立ち上げ

http://www.nikkei.com/tech/ssbiz/article/g=96958A9C93819696E2E3E2E2868DE2E7E2EAE0E2E3E3E2E2E2E2E2E2;p=9694E0E5E2E3E0E2E3E2E1EAE4E0
2011/8/9 7:00 
歯ブラシから人工衛星まで―――。これは全国屈指の中小企業の集積地である大阪
東大阪市の強さを象徴するような言葉だ。東大阪では今、そのものづくり力に磨
きをかけるため、新たな分野を開拓する動きが出ている。自動車や航空機の軽量化
材料として注目される炭素繊維、強化プラスチック(CFRP)に着目した有志企
業が研究会を立ち上げた。産学連携で既存の金属プレス機を活用した製品の量産や
リサイクルの技術開発を狙う。

 CFRPは、アルミより軽く鉄より強いうえ、さびないのが特徴だ。ボーイング
社の最新鋭機「787」の機体にも採用され、従来より2割の燃費向上に貢献し話題
になった。自動車の車体の軽量化にもつながり、電気自動車の走行距離を伸ばすた
めに役立つと期待されている。

 その将来性に目をつけた東大阪市内の中小企業が「e・コンポジット研究会」と
名付けた組織を立ち上げたのは今年3月のことだった。金属プレスの浜田プレス工
芸、プレス金型製造の小西金型工学のほか、樹脂製品加工のカツロン、リサイクル
用破砕機製造のホーライと複合材料を使った製品デザインを手掛けるマジックボッ
クスJPの5社が名を連ねる。

 取り扱うのは熱を加えれば成形し直せる熱可塑性CFRP。現在の主流は再成形
できない熱硬化性の素材だが、それでは量産化になじまない。しかも一度、加熱し
て固めてしまうと形を変えられないのでリサイクルできないからだ。

 各社が得意分野を生かし、既存の金属プレス機で加工できるよう後付けの加熱装
置の開発やリサイクル技術の確立を目指す。6月末には中小企業庁の「戦略的基盤
技術高度化支援事業」(通称サポイン)にも採択され、3年間で約9000万円の補助
金が出る見込み。9月から本格活動に入る予定だ。

 今回の構想の生みの親で研究会の技術顧問を務める近畿大学理工学部の西籔和明
准教授によると「現在、熱可塑性のCFRPは60センチ角の板で1万円もする。欧
州製の専用プレス機は最低でも1億円と、高い」という。

 既存設備を活用した量産体制から、使い終わったものの再利用の仕組みまで構築
できれば材料と生産面の双方でコストが抑えられる。しかも、中小企業にとっては
、製品の高付加価値化につながる。国内産業の空洞化が叫ばれるなか、西籔准教授
は「目指すは日本国内での地産・地消・地再」と力を込める。CFRPの新技術の
開発で、東大阪という地域のものづくり力の強化につなげたいという意味だ。

 この考えに共鳴したのが、市内企業の活性化に頭を悩ませる東大阪市経済部。市
内には専業の金属プレス業者だけで約160社ある。しかも樹脂成形業者や破砕機メ
ーカーなどリサイクルの技術開発に適した業種もそろっている。昨年来、CFRP
関連のセミナーを開催し、関心の高い企業を募るなど研究会発足を側面支援してき
た。

 研究会の会長を務める浜田プレス工芸の浜田恵社長は、「大手の海外移転で仕事
は少なくなる上、毎年の値下げを求められる。このままでは日本の金属プレス業の
衰退は避けられない」と業界の現状に危機感を募らせる。CFRPに光明を見いだ
すべく加熱装置の開発を担う。

「よそではできない難しい仕事も手掛けるから、うちの社名は工業ではなく工芸」
と語る浜田社長。ただ、CFRPに関しては「金属加工とは似て非なるもの。均等
に熱をかける方法や、金属のように伸びない素材をどうやってプレス機で成型する
か、うちの技術力が問われる」と気を引き締める。

 小西金型工学の小西修史・統括部長は、西籔准教授と近大で同級生だったという
間柄。業界の現状を話しあっていたとき「金属金型業者だからといって、金属にこ
だわっていてはだめ」と発想の転換を促された。

 量産化技術とともに研究会の柱となるのがリサイクル。ホーライはCFRPの加
工の際に未使用となる分を有効活用するため、使いやすい大きさに切断する装置や
不良品や廃棄物をペレットの原料として細かく破砕する装置の開発を進める。カツ
ロンは破砕後のCFRPを押し出し成形機を使ってペレット化する製法の開発を担
当する。「樹脂以外を扱うのは初めて。手探りで皆の知恵を借りながらやっていく
」とカツロンの石川明一社長。ホーライの鈴木雅之社長も「カツロンと連絡を密に
し、どの程度、細かく破砕するのがベストなのか詰めていく」

 複合材料
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を使った製品の市場動向に詳しいマジックボックスJPの柳原淳一社長は、「素材
として扱ってこなかっただけで、普段から精度の高い仕事をこなす東大阪の中小の
技術力にはものすごいポテンシャルがある」と強調する。自動車の車体などに使わ
れる大型部品は輸入コストや中小の品質管理能力の高さを考えると、国内生産にな
る可能性が高いと予想する。

 西籔准教授は「昔のおもちゃはブリキ製だったが、今やプラスチックに入れ替わ
った。飛行機や自動車も必ず同じ道をたどっていく」とCFRPの可能性を語る。
そのとき一大生産拠点となっていることを夢見て、東大阪の中小の奮闘が始まろう
としている。

東大阪支局長 中村厚史)