鉄の触媒作用直接観察 CNT、グラフェン関係

http://www.s.u-tokyo.ac.jp/ja/press/2011/26.html
出典 8/23 東京大学プレスリリース
中村 栄一(東京大学大学院理学系研究科 化学専攻 教授)

今回、1つの鉄原子が炭素?炭素結合を組み替える触媒となって、フラーレンC60(
サッカーボール)が、その周りの有機分子との反応により、一回りサイズの大きな
C70フラーレンフットボール)様の物質へと成長する様子を電子顕微鏡で動画撮
影することに成功した。 鉄触媒による炭素?炭素結合組換え反応は、
Fischer-Tropsch反応(石炭からガソリンを合成する反応)やカーボンナノチュー
ブ、グラフェンなどの合成法として重要なばかりでなく、パラジウムなどの貴金属
を置き換える触媒として、「元素戦略」的にも重要である。

今回の研究では、Fischer-Tropsch反応やナノチューブグラフェン合成の触媒と
して広く知られている8族元素、鉄およびルテニウム原子によって引き起こされる
炭素?炭素結合組換え反応が、金属触媒のない状態でのフラーレン有機フラーレ
ンの反応、さらには(触媒作用のない)カリウムランタノイド金属の存在下での
フラーレンの反応に比べて、はるかに早いことを実証した。

第二の要点は、鉄の1原子がフラーレン分子の周りを動き回って、結合組換え反応
を触媒する様子の動画の記録に成功したことである。
「バッキーフェロセン」分子を格納するのにぴったりの太さのカーボンナノチュー
ブに沢山詰め込んで隙間をなくすことで(図2参照)、分子に結合している鉄原子
や炭素原子が他の場所に移動できないようにしたことがポイントである。

このような炭素?炭素組み替え反応は、 石炭からガソリンを合成する方法である
Fischer-Tropsch反応や、カーボンナノチューブグラフェンの合成手法と深く関
係している。 本成果は、今後の触媒反応、ナノ炭素化合物、燃料電池などの研究
分野において、高効率・高選択的な物質合成への新しい道を拓くと期待される。