小寺信良のEnergy Future(2):太陽電池市場とその動向

小寺信良氏が発電/蓄電/送電の3つをテーマに次世代エネルギーについて語る新
連載。第2回は太陽電池の市場とその動向について紹介。
[小寺信良,@IT MONOist]
http://monoist.atmarkit.co.jp/mn/articles/1108/10/news008.html
 
中古市場があるということで気になるのが、製品の寿命である。原理的にシリコン
太陽電池の寿命は、半永久だ。ただ現実には保証期間は10年、実効動作期間は20
年以上、というのが通説となっている。どこが劣化するかというと、シリコンセル
そのものではなく、ガラス接着している接着剤の劣化、ガラス面の割れ、パネルフ
レームの変形といった、製品としての作り込み部分である。
 まだソーラーパネルは、特性劣化による大量廃棄といった事例が存在しておらず
、寿命や廃棄の問題は先送りされているのが現状だ。もっともシリコンは元の石や
砂などに返っていくだけなので、環境負荷も少ないと見積もられている。

 その一方で、昨年世界最大の太陽電池メーカーに躍り出た米ファーストソーラー
のものは、「化合物薄膜太陽電池」と呼ばれ、有毒なカドミウムレアメタルのテ
ルルの化合物で製造されている。製造コストがシリコン系に比べると1/2から1/3と
いうことで初期導入コストが安くなるため、ヨーロッパでの採用も増えている。こ
ちらの方は、廃棄時にはメーカーが引き取る形で決着したようだが、引き取った後
どのように処理していくのか、あるいは廃棄するときまで会社がちゃんとあるのか
、といったところの不安も拭い切れない。

下克上アリアリの業界ピラミッド構造 
 どの業界でも高コスト高品質なものを頂点に、低コスト低品質なものへ向かって
ピラミッド構造を形成する。太陽電池業界もまたしかりで、大きく分けると現時点
では4段階のピラミッド構造になっている。
太陽電池産業のピラミッド構造 トップの階層は高効率だが値段が高い単結晶シリ
コンで、業界では「太陽電池スーパーカー」などと呼ばれており、三洋電機、シ
ャープ、米サンパワーが製造している。第2層は多結晶シリコンの高効率のもので
、シャープ、京セラ、三菱電機などがここに入る。国内で多く導入されているのは
、この階層のものだ。

 第3層は多結晶の効率がそれほど高くないもので、ここは多くの中国メーカー、
インリーグリーンエナジー、JAソーラー、サンテックパワー、トリナソーラーなど
がひしめき合っており、最も価格競争が激しい部分だ。一番下は薄膜アモルファス
系で、価格は安いものの変換効率が低いため、広大な面積が用意できる発電産業用
とされてきた。しかし最近は変換効率が10%を超え始めており、家庭用としても注
目されている分野だ。
 いま大きく注目されるのはこの第3層の部分で、価格で競争力があるため、知名
度さえ上がれば一気に市場を席巻(せっけん)する可能性を秘めている。国内メー
カーは低価格競争に巻き込まれないよう、さらに高付加価値、高効率で上の層に逃
げていくしかないというのが実情だ。

 価格競争という点では、前出の化合物系も大きな広がりを見せている。ファース
トソーラーだけでなく、日本では昭和シェルの子会社ソーラーフロンティアが、銅
インジウム、セレンなどを使った「CIS薄膜系」のセルを製造、今年(2011年)
春には宮崎県国富町に1000億円を投じた超巨大工場が稼働した。生産能力としては
、単一工場として世界一の規模だそうである。